青森と秋田の両県にまたがる十和田湖。風土が育んだ両県の食文化がここにあります。
また、民芸品もこの地域の風土が生み育てたものであり、地域の生活にも根付いているものです。
ひめます
十和田湖を代表するひめますは、サケ科の淡水魚で紅鮭が湖で生活しているうちに海にくだることができなくなり、湖で一生を過ごす魚です。
「ひめ」の名にふさわしく小ぶりで、綺麗な銀色の体に鮮やかなオレンジの身が特徴的です。
綺麗な湖に生息しているため、生食が最も美味。甘みがあり、とろりとした舌触りで、刺身やカルパッチョ、寿司など生食だけでも食べ方が豊富です。また、塩焼きやフライ、天ぷらなどでも楽しむことができます。
ほとんどの民宿や食事処で食べることができ、工夫を凝らしたこだわりメニューを提供している店舗もあります。
ワカサギ
水の綺麗な十和田湖で育ったワカサギは淡白でクセがなく、家庭では、調理しやすいフライや塩焼きで食べられています。
十和田湖に来たらぜひ味わっていただきたいのが、獲れたての子持ちワカサギの甘露煮。濃厚で甘辛い味付けとプチプチとした食感でご飯がすすみます。
頭や内臓、骨は気にならず、すべてをまるごと食べることができます。
山菜
自然豊かな十和田湖では四季折々の山菜が採れます。冬の寒さにじっと耐え、新芽が息吹く春には、ウドやフキ、筍、ワラビなど山の恵みが顔をだします。夏には食感の爽やかなミズ、秋にはマイタケやナメコ、ムキタケなどのキノコ類が沢山採れます。
採れたての山菜を調理してくれる旅館などもあり、舌で味わい、十和田湖の四季を感じることも魅力のひとつです。
アカシアのはちみつ
十和田湖を有する秋田県小坂町では、十和田湖樹海ライン沿いは、6月にアカシアの真っ白な花が一斉に開花する、日本でも有数のアカシア原生地帯です。そこで採れるはちみつは、すっきりとした後味と透明度の高い透き通った色が特徴。クセがなく、淡い香りとソフトな甘さで親しまれ、お料理などにも最適です。
菜の花油
100%国産なたねからの一番搾りで、なたね本来の旨みを生かす為に昔ながらの搾り方で作っています。
秋田県小坂町の菜の花畑は5月中旬から菜の花のあざやかな黄色に染まり、菜の花畑を目当てに観光客も毎年訪れます。
菜の花畑は遺伝子組換えをしていない「キザキノナタネ」を使用しており、従来の日本産菜種はエルシン酸という不飽和脂肪酸を多く含み、取りすぎると心臓疾患の原因になると言われていますが、品種改良の結果エルシン酸をほとんど含まず良質の食用油として販売しています。
料理は菜種本来の旨味を大切に生かし、深みのある円やかな味を堪能できます。
果実酒
古くから鉱山で栄えた山あいの町・秋田県小坂町。十和田湖を有するこの町は高涼な土地を活かして貴重な山ぶどう交配種によるぶどうを生産しています。「樹海」の名は十和田湖に通じる観光道路「樹海ライン」から命名されています。
種類は、赤、白、ロゼとあり、味は辛口〜やや辛口。山ぶどうの鮮やかな色合いと奥深い独特な香りを引き継いだ、風土を丸ごと味わえるワインです。
きりたんぽ
つぶした御飯を竹輪のように棒に巻き付けて焼いた食品を「たんぽ(蒲英)」と呼び、特に秋田県で親しまれています。焼き色がついたら棒から外し、食べやすい大きさに切って食べるのが一般的で、これが「きりたんぽ」と呼ばれ、流通しています。
焼いて火が通ったきりたんぽは、味噌を付けて食べるほか、鍋物にもします。十和田湖では、秋田県の地鶏である比内地鶏をつかったきりたんぽ鍋を味わえます。
稲庭うどん
日本三大うどんのうちのひとつである稲庭うどん。秋田県南部の手延べ製法の干しうどんで、平べったい形状が特徴です。麺の中に気泡があるため、食感は滑らかで喉越しがよく、コシの強さと相まってスルスルと食べてしまいます。秋田南部のものですが、青森と秋田の県境にある十和田湖でも稲庭うどんを味わえます。
せんべい汁
八戸市を中心に、青森県南部地方を親しまれているせんべい汁。
南部は古くから、稲が生育する季節にやませと呼ばれる偏東風が吹き、頻繁に冷害に見舞われていました。そのため、米ではなく小麦の煎餅が発達し、今のような堅焼きではなく半生焼きのせんべいを汁ものにちぎり入れたものが発祥だと言われています。
醤油味の汁(出汁はお好みで鶏や鯖など)で煮込んだせんべいは、汁を含んでもちもちとした食感に変わります。身体が温まりますので、寒い季節は特に、観光客に喜ばれているメニューのひとつです。最近では、B級グルメとして有名。
十和田バラ焼き
B級グルメで人気の十和田バラ焼き。牛のバラ肉と大量のタマネギを、醤油ベースの甘辛いタレに絡めて鉄板の上で炒める料理です。シンプルなこの料理は一度食べるとクセになり、ご飯のおかずにも、ビールのお供にも最適。お店ごとに少しだけ味付けが違い、食べ比べてみるのも楽しいかもしれません。
裂織(さきおり)
東北地方の伝統工芸品である裂織。着古して擦り切れた着物などを裂いて、糸に織り込んでつくりあげられた工芸品です。
東北では、その寒さゆえに絹が育たず、衣類は大変貴重でした。すり切れた繊維を再利用することは、節約を強いられていた昔のひとの知恵であり、温かさを保つための工夫でもありました。
織り込まれる布は色とりどりで、織る人の個性があらわれます。織り込む場所によって表情をかえ、ひとつとして同じものをつくれないので、世界にたったひとつの自分だけの色と柄を探すことについ夢中になってしまいます。
あけび細工
主に青森県津軽地方や秋田県で作られているあけびづる細工。文字通りあけびのつるを編んで作る工芸品で、様々な日用品がつくられていますが、バスケットが最もよく見られます。その温かみは手にした瞬間に伝わり、つるの形状を生かして編んでいくため、自然の恵みをそのままに感じることができる仕上がりです。とても丈夫で、一度使用した人はその使いやすさと味のある形状に、ファンになってしまうようです。自分用にはもちろん、思わず誰かにプレゼントしたくなるような特別感のある工芸品です。