人は、日光・水・大地・動植物などとともに自然を構成し、自然から恩恵を受け、それらを生かすことにより繁栄してきました。
また、私たちの目をひくきれいな草花や樹木は、自然の歴史の産物であり、進化を重ね、地域の自然環境に適応して生きています。
豊かな自然は、先人たちが引き継いできたもの。美しい自然の風景は、悠久の時を刻み、地域に受け継がれてきたかけがえのない財産です。
ところが、近年はとくに著しく、大気の汚染、水の汚染、みどりの消滅が進み、自然の中で生物が生きていく諸条件は、急速に悪化しています。
自然を尊び、自然を愛し、自然に親しみましょう。
自然に学び、自然の調和を損なわないようにしましょう。
美しい自然、大切な自然を末永く子孫に伝えましょう。
国立公園は、その景観の優劣により、特別地域と普通地域に区別して管理されています。
地域区分による管理
特別地域と普通地域
特別地域は、その重要性に応じてさらに細区分され、特別保護地区および、第1種から第3種までの地域に分けられています。特別保護地区は、あらゆる行為がもっともきびしく規制され、公園の核心部となる地域です。その他の地域を普通地域とし、ここでは前者より規制がゆるやかです。
十和田湖・奥入瀬地域の場合、奥入瀬渓流、十和田湖外輪山の一部などが特別保護地区となっています。
集団施設地区
健全で快適な環境を確保し、適正な利用を図るため、公共的な公園施設を重点的に整備する利用拠点として「集団施設地区」が制定されており、十和田湖周辺では休屋です。
法律による規制
自然に生育する植物の採取、損傷は、次の法律等によって規制され、違反すると罰金や懲役刑が科せられます。
自然公園法・県立自然公園条例
国立公園、国定公園、県立自然公園では、植物の損傷、採取が規制されています。
自然環境保全法・自然環境保全条例
国や県指定の自然環境保全地域野生植物保護地区では、指定された植物の損傷、採取が規制されています。
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律
アツモリソウなどの希少種が指定され、損傷、採取、譲渡が規制されています。
森林法
森林において高山植物等を窃取した者は森林窃盗罪として罰せられます。
約200万年前から始まった氷河期は、寒冷な氷期と温暖な間氷期を約10万年の周期で繰り返してきました。約2万年前の最終氷期、北極周辺の植物群が日本にも南下し、生育地を広げました。その後気候が温暖になると、その植物群は北上しましたが、一部は狭い高山地帯に追い上げられました。これが高山植物の起源です。
高山植物は分布域が分断・限定され、それぞれの場所ごとに個体差が少ないため、絶滅しやすい植物であると言えます。
私たちひとりひとりの心掛けで、長い年月をかけて育まれた自然を守っていきましょう。
採らない、折らない
野生植物は自然の風景の中で楽しみましょう
青森県では野生生物の現状を把握するため調査したところ、約440種の植物が絶滅のおそれがあることが分かりました。そのなかには、観賞用に採取されたために数が激減したものが多くあります。
「この花がきれいだから、1本くらい…」という気持ちで摘み取らずに、自然の風景の中で鑑賞しましょう。
不法採取は許されない行為です
観賞用、園芸用、薬草用などとして採取され、多くの植物が絶滅の危機にさらされています。特に、商売目的の大量採取は、地域の自然を壊す許されない行為です。
踏み込まない
踏み込むと回復が困難
高山地域の草花は厳しい環境の中で精一杯生きています。盗掘や踏み込みで一度荒廃した植生は回復が困難です。ロープの張ってある登山道や木道の外に踏み込んで草花を採取することはやめましょう。
デリケートな湿原を踏み付けないで
八甲田山などに見られるミズゴケ湿原は、分解しにくい植物遺体(泥炭)が高く積もってできたもの。水分環境の変化により、植生が変化を起こしやすく、踏み付けは湿原の乾燥化の原因となります。泥炭堆積量は年間1mm程度といわれ、一足の踏み付けにより、長い年月を経た泥炭の成長過程が一瞬で失われることになります。
汚さない
植物を取り巻く環境も大切に
地域の自然に適応した野生の植物は、厳しい気象条件に耐えたり、他の植物と競争しあったり、昆虫と共生関係を持ったりしています。植物を取り巻く自然環境にも目を向けてみましょう。
廃棄物の排出や薬物の使用で自然は汚染され、破壊されてしまいます。
ゴミを捨てていませんか? 空気を汚していませんか? 水を汚していませんか?
※参考:青森県自然保護課 監修リーフレット、自然保護憲章