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奥入瀬渓流探勝路ガイド

渓流の野鳥

渓流の野鳥

 渓流の野鳥Ⅰ
うっそうとした原生林のなかを流れる清流。奥入瀬を訪れる人々が抱いているそんなイメージも、出発地点の焼山あたりではまだ見ることができない。しかし、川沿いを注意深く眺めれば様々なものが見えてくる。渓流の野鳥もその一つである。河原の石の上で、長い尾をさかんに上下に振っているのはセグロセキレイである。スズメより少し大きいスマートな鳥だ。また、川の流れのなかにはオシドリも見られるだろう。その派手な姿も、自然の色のなかに見事にとけ込んでいる。「キャラッ、キャラッ」という大きな鳴き声はヤマセミだ。全身白黒の鹿の子模様が美しい。ヤマセミはいつでも見られるわけではないが、このあたりでは比較的よく見られる。

 

河辺林

河辺林

 
 河辺林・中州などの食物
奥入瀬渓流もこのあたりは、比較的開けていて明るい感じがする。そして広がりをもった流れは、しばしば中州をつくりあげる。このような中州や岸に治った堆稚地などの、洪水のときには水につかってしまうような不安定な場所には、ヤナギ類やタニガワハンノキなどの林が見られる。とくに中州などには、同じような背丈の タニガワハンノキがびっしりとはえていて、独特の景観をつくっている。

 

 
林床の植物

林床の植物

 
 林床の植物

春まだ浅い五月。渓流沿いの林のなかでは、キクザキイチリンソウや二リンソウが一斉に花を咲かせ林床を埋めつくす。これらの植物は、雪解けから新緑までの短いあいだに、芽吹きから結実までを終えてしまう。そしてまわりの樹々の葉が生い茂るころには姿を消し、薄暗い林のなかはかわってシダなどの日陰を好む植物でおおわれる。

 

 

トウホクサンショウウオ

トウホクサンショウウオ

 
 トウホクサンショウウオ
五月の 末頃、このあたりのちょっとした水溜りには、勾玉のような寒天に包まれたカエルの卵に似たものが見つかる。トウホクサンショウウォの卵塊である。 トウホクサンショウウオは半止水性のサンショウウオで、流れ込みのある水溜りに卵を生み幼生はそこで育つ。成体になると水辺をはなれ、以後湿った落葉や朽ち木の下で過ごしているといわれている。 このほかに十和田周辺には、水の流れのあるところで見られる(流水性の)ハコネサンショウウオや池沼や大きな水溜りのようなところに卵を産む(止水性の)クロサンショウウオが生息している。

  
 

石ケ戸の伝説

石ケ戸の伝説

 
 石ケ戸の伝説
「ケ戸」とはこの地方の方言で小屋を意味する。つまり「石ケ戸」とは石でできた小屋、いわゆる岩屋を意味している。実際、大きな岩の一方がカツラの巨木によって支えられて岩小屋のように見える。そして、この自然の岩屋には、一つの伝説が伝えられている。 昔、鬼神のお松という美女の盗賊がここをすみかとし、旅人から金品を奪っていた。その手口は、旅の男が現れると先回りして行き倒れを装い、介抱してくれた男の隙をみて短刀で刺し殺すとも、男の背を借りて川を渡り、流れの中ほどにさしかかるといきなり短刀で刺し殺したともいわれている。 ところで、この女盗賊が住んでいたという石を支えるカツラの巨木は二本あって、そのうちの一本は、樹齢二百年とも四百年ともいわれながら、昭和六十三年八月、地上四メートルを残して折れてしまった。

  

イワナ

イワナ

 
 イワナ
九月下旬、八甲田の頂にはじまった紅葉は、山裾を染めながら一カ月をかけて奥入瀬渓流へと降りてくる。川面にうつる紅葉の美しさに目を奪われるこの時期、水のなかではイワナの求愛行動がはじまっている。イワナは「幻の魚」などと呼ばれるが、ここ奥入瀬ではその姿をしばしば見ることができる。とくにこの時期に見られる求愛行動は、オスがみずから選んだメスにほかのオスが近づかないよう、次々に追い払うという、興味深いものだ。

 

 

雲井の滝

雲井の滝

  
 雲井の滝

うっそうとした森林にかこまれた断崖から、三段になって落下するこの雲井の滝は、高さ二十メートル、水量も豊かで渓流沿いにある滝のなかでも、みごたえのある滝の一つだ。支流から奥入瀬本流に落ち込む多くの滝は、長い年月のあいだに本流の川底が浸食され、本流と支流の河床のあいだに大きな落差が生じてできたものである。そしてその滝は、岩を少しずつ浸食しながら上流に向かって後退し、いつかは消える運命にある。この雲井の滝は、その水量が豊富なことから岩が削りとられるのも速く、ほかの滝にくらべると、ずいぶん奥まったところまで後退している。

 

カモシカ

カモシカ


 カモシカ
この付近の渓流沿いの平坦地やそこにつづく斜面には、カモシカがよく姿を見せる。一年を通じて見られるが、やはり樹々の葉が茂っていない早春や晩秋、そして冬の季節に見つけやすい。 うまく見つけることができたときには、とにかく静かにしてあまり動いてはいけない。そうすれば、かなり長い時間カモシカと対面していることができるだろう。ブナの樹々のあいだからじ っとこちらを見ているカモシカと目と目が合ったときには、都会では体験できない大きな感動が得られるはずだ。 美しい奥入瀬の景観だけでなく、その奥の森のなかもじっくり見てみよう。

 
 

河辺林

河辺林


 河辺林-湿った環境の林
奥入瀬渓流は∪字形をした渓谷で、谷底の平坦部が比較的広く、湿った環境を好む植物が広く分布している。 十和田湖という大きな湖を源とするこの川は、水量が安定し洪水も少ないため土がよく肥えている。トチノキ、カツラ、サワ グルミといった林が流れの両側に広く見られ、その暗く湿った林内はオシダなどのシダ類でおおわれている。
 ところで、十和田名産として売られているハチミツは、このトチノキの花から採取されたものである。六月のなかごろ、トチノキがブドウの房を逆さにしたような花をつけはじめるころ、養蜂家がミツバチを使って集めるのである。一般のハチミツにくらべ少々赤味を帯び、ほどよい酸味があるとか。原生林が育んだ 味かもしれない。

 
 

渓流の野鳥

渓流の野鳥


 渓流の野鳥Ⅱ
渓流沿いを歩いていると、突然、大きく長いさ えずりに驚かされることがしばしばある。声の方向を探してみても、なかなかその姿を見つけることができないが、声の主はミソサザイである。天を仰ぎ、思い切り口を開け、小さな体を打ち振るわすようにさえずっている。
 「ビッ、ビッ、ビッ」と鳴くのは、渓流の代表的な鳥の一つ、カワガラスである。スズメよりもだいぶ大きく、ずんぐりとした体つきをしている。流れに飛び込み、水中で 餌をとる。 
 もう一つ、なかなか見られないかもしれないが、渓流にすむ美しい鳥がいる。アカショウビンである。渓流沿いの樹々の緑もでそろった六月ごろから、「キョロロロ:・:・」という特徴ある声で鳴く。アカショウビンという名は、全身赤褐色のその姿からついたものかもしれないが、このあたりでは「南蛮鳥」とも呼ばれている。

 
 

銚子大滝

銚子大滝


 銚子大滝
奥入瀬渓流随一の滝、銚子大滝は高さ七メートル、幅二十メートル。水音高らかに水しぶきをあげる堂々たる滝だ。流れ落ちる水は多量の水霧をうみ、木漏れ日がそこに幾本もの光の筋をつくっている。銚子大滝は奥入瀬本流にかかる唯-の滝で、滝の右手に伸びる断層や、左から流れ込む寒沢の影響でできたと考えられている。この滝は魚止の滝とも呼ばれ、十和田湖への魚の遡上を妨げている。そのために長いあいだ、十和田湖には魚がすめないといわれてきた。

  

子ノ口の水門

子ノ口の水門


 子ノ口の水門
十和田湖の水は、農業用水や発電用など、多目的に使われている。奥入瀬渓流に流れ落ちる水も、実は「観光放流」という目的をもってこの子ノロの水門でコントロールされているものだ。
 奥入瀬渓流は、昔から湖によって流水が自然に調整されたことと、70メートルにつき1メートルというゆるい勾配のため、川のなかの小さな岩や倒木にもコケや潅木がはえ、独特の美しく繊細な景観をつくりだしている。 この美しい景観を維持するため、昼間は水門を開き-定の水を流している。しかし夜間や冬期は水門が ほぼ閉じられるため、渓流は支流から流入する 水量が主なものとなり水位も低下する。