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奥入瀬渓流

奥入瀬渓流

奥入瀬渓流

 十和田湖の子ノロから流れでる奥入瀬渓流は、奔流となって苔むした岩を洗い、あるときは瀬を速み、あるときは淵に淀み、途中多くの滝を左右の絶壁から迎え入れなやけがら、やがて広い河原をおだやかに流れ焼山に至る。静的な十和田湖の湖水美に対し、深い自然林におおわれた約十四キロの奥入瀬渓流には、千変万化の水の流れが生む躍動感あふれる景観が展開する。そして両岸に迫る断崖は、軽石や火山灰が高温の状態で堆積し、熱と自重によって生成された溶結凝灰岩といわれるもので、奥入瀬の景観に迫力をもたらしている。 十和田湖が流量を自然に調節することから奥入瀬渓流には大きな洪水が起こらず、繊細で優美な独特の渓流美が昔から維持されている。 渓流のなかに露われる大小の岩々には、ツツジやカエデ類が生育し、水際の飛沫を浴びる岩面には、なめらかな青い苔が鮮やかに見える。洪水の心配がないため、渓流に沿って流れとほば同じ高さに車道と歩道がつくられ、尾根や山腹の道から渓谷を眺めるのとは、また趣の異なった景観を味わうことができる。十和田、奥入瀬、八甲田を結ぶ車道は、大木の梢が幾重にもかさなり大空をおおい、さながら緑のトンネルとなる。とくに、奥入瀬渓流沿いの道は、木の葉に見えかくれする滝や水流が奥行きの深さを感じさせる。ところどころに、トチノキやカツラなどの枯木が横たわり、朽ち果てた幹の上に幼樹が根づき、新しい生命が再生されていく様子が見られる。 奥入瀬渓流に展開する老、壮、青の各樹林の調和した森林美は、訪れる人々に深い感動を与えずにはおかない。

  

奥入瀬渓流

奥入瀬渓流

奥入瀬渓流

奥入瀬渓流

    

入瀬渓流の四季 

 四月下旬、雪が消えるのと同時にエンレイソウやニリンソウが咲きはじめ、五月上旬にはブナやカツラの新芽が歩道を行きかう人までを緑に染める。自然のみずみずしい生命力に誰もが驚かされるはずだ。自然歩道のわきにはヤマツツジ、ミヤマカラマツなどの花が次々と咲きだし、やがて濃い緑の夏を迎える。 十月上旬、十和田湖の外輪山からはじまる紅葉は、中旬には奥入瀬に降りてくる。カツラ、トチノキ、ブナなどの黄葉、ヤマモミジ、コミネカエデなど色鮮やかなカエデ類の紅葉が渓谷全体を染め上げる。秋から冬への変化は強風とともに突然やってくる。紺碧の空に雪が舞いはじめ、渓流の石への冠雪、名もない滝の氷結など、冬の奥入瀬には雪と氷の造形美が広がる。               

 「住まば日の本、遊ばば十和田、歩きゃ奥入瀬の三里半」と大町桂月にたたえられた渓流美は、その歌のとおり、渓流沿いの自然歩道を歩くことによって、はじめてその魅力を堪能することができる。 焼山から石ケ戸のあいだは、静かな森の散策を楽しむことができる約一時問半の道、そして石ケ戸から子ノロまでは変化に富んだ約二時間半の道である。全行程の標高差は約二百メートルで、勾配のいたっておだやかな自然探勝路である。