睡蓮沼
青森から十和田湖に至る道路、通称十和田北線のなかでいちばん標高の高い傘松峠(千二十メートル)のすぐ近くにある。北八甲田の山々を背に、湿原にかこまれた小さな美しい沼が睡蓮沼である。記念写真を撮るには絶好の場所で、いつも観光客で賑わっている。 沼の背景の山々は、左から見て石倉岳、硫黄岳、大岳、小岳、高田大岳の秀峰。これらの山々が影をうつす沼面には夏、この沼の名になったスイレン(工ゾヒツジグサ)が白い小さな花を咲かせる。また、紅葉時には赤、黄の色彩が水鏡に鮮やかにうつしだされ、まるで自然の色見本のようである。峠から沼にかけては、高田萢といわれる高層湿原で、たくさんの池塘が点在している。七月、残雪のなかに咲くミズバショウの白い 花を車窓からも眺めることができる。
地獄沼
酸ケ湯温泉から徒歩五分。睡蓮沼と同様に十和田北線沿いにある。別名底なし沼といわれる地獄沼は、第四紀八甲田火山の名残で爆裂火口湖である。
今も噴気活動をつづけ、沼の奥付近では九十度もの熱湯を湧出している。岸辺で手を入れてみると特別熱いという気はしないが、危険なので立ち入り禁止。
この沼と、後方にそびえる八甲田大岳との絶妙なバランスが素晴らしい。とくに新緑、紅葉のころがよい。
ふかし湯
別名「まんじゅうふかし」といわれる。 地獄沼から南へ百メートルほどくだった小さな東屋がそれ。 ふかし湯といってもお風呂ではなく、温泉蒸気を通した木箱の上に座って、お尻をあたためるというもの。木箱のふちから熱い蒸気がもれることもあるので、火傷に注意しよう。 すぐ近くにペンションが一軒と露天風呂がある。ここから、となりの東北大学植物実験所付属高山植物園へ抜ける道がある。
東北大学植物実験所付属高山植物園
十ヘクタールにもおよぶ園内には周遊コースが設けられていて、八甲田山に生育する植物約六百種を目にすることができる。ここに行けば、わざわざ登山をしなくても手軽に高山植物が楽しめる。 園内中央に極楽沼の湿原があり初夏六月、ワタスゲが咲き乱れ、八甲田山の主峰大岳を背景に素晴らしい景色を見せてくれる。
萱野茶屋
国立公園の北端、標高五百四十メートルの芝生の高原は、休日ともなるとバーベキューやピクニックなど、多彩なレクリエ-ションの場となる。 この高原のなかに大きく樹冠を広げて立っているのはシナノキである。霧が立ち込め、あるいはゆっくりと流れるとき、樹々が見えかくれし、幻想的な情景をつくりだす。
また、西のはずれ、八甲田側にある萱野茶屋は、長生きのお茶が無料で飲めるとあって好評だ。「一杯飲むと三年長生きし、二杯では六年、三杯飲むとなんと死ぬまで生きる」というお茶で、JRバスもここで十分の休憩をとるので、ぜひ試してみよう。
雪中行軍碑
陸軍歩兵第五連隊は、明治三十五年一月、北国ロシアとの戦争に備えて、防寒防雪研究のため雪中行軍を計画した。 雪中行軍は、八戸地区に敵が上陸したとの想定のもとに、友軍援助のため青森から田代平越えで三本木(十和田市)へ一泊二日の予定で一月二十三日出発した。途中猛烈な吹雪と寒気に悩まされ、帰路を発見できず、行軍四日目の二十六日までに百九十九名という大量の死亡者をだし、生存者はわずか十一名という悲惨な結果となった。
遭難現場の馬立場には、猛吹雪のなか、ただ一人立ち尽くして捜索隊の標識の役割を果した後藤房之助伍長の銅像が立っている。 銅像茶屋となりに「八甲田雪中行軍遭難資料館」がある。
田代平湿原
八甲田山という名前は、多くの「甲(かぶと)」のような峰々のあいだに「田」と呼ばれる湿原が、点在することによるという。この十指にあまる湿原のなかで、もっとも大きいのが田代平湿原だ。探勝路入口まで車で行くことができる。
コースは、ゆっくり歩いても一周一時間ほどで、木道が敷かれているので歩きやすい。六月下旬から七月上旬にかけて、二ッコウキスゲの群生が素晴らしい。北八甲田山山系ではこの湿原でしか見られない。
田代平湿原一帯は、遠い昔に十和田湖とならぶカルデラ湖だったが、湖水堆積物とその後の八甲田火山の噴出物で埋めつくされてしまった。
また、田代平湿原の南東、箒場平の高原のレンゲツツジの群落も見逃せない。六月中旬、朱橙色の花が一面に燃えるように咲き乱れる。









